高校卒業と同時に地元浜松を飛び出して、青年海外協力隊での活動に参加。 およそ7年間、数度にわたりアフリカと日本を行き来する毎日を送っていた杉山さん。 その後一度、民間企業に就職するも、青年海外協力隊の活動で出会った、マラウィでの一村一品運動をさらに探求したいと、 慶応義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)で学ぶことを決意。入学を果たします。
在学中、一村一品運動への探究心はそのままに、メキシコの地域研究をテーマとした山本純一先生研究室に所属。 『マヤビニックコーヒー』と出会い、生産者や地域支援の活動に携わっていくうちに、本当の支援とは何かを考えるようになります。 2011年、卒業と同時に起業を決意。『マヤビニックコーヒー』を販売するオンラインショップを開設し、『豆乃木』をスタート。
同時に、ホームページも立ち上げ、 「自分で情報発信していくことができるホームページ」であることにポイントを絞り、 ホームページ作成CMSを導入。 さまざまなコンテンツで情報発信を行い、中でもブログ『メキシコ滞在記』が人気です。
現在、拠点を浜松に移し、実店舗もオープン。 魅力的なコンテンツで常に情報を発信し、最大限にホームページを活用している 『豆乃木』代表・杉山さんにお話をうかがいました。
起業にあたり、まずホームページの開設の準備に
とりかかったと聞きました。
起業するならホームページの開設は必須だと思っていました。
知人から紹介されたCMSは、自分でブログなどを更新できて、コンテンツも増やしていけると聞いて「コレだ!」と。自分で情報発信していけるというのは非常に魅力的でしたし、そこがホームページ開設にあたって一番重要なポイントだと思っていました。 だから、求めていたものにすぐ出会えて、人のつながりってやっぱり大事!と改めて思いました。
実際に制作・運用しての感想は?
制作にあたっては、ビジネスのビジョンをまとめたり、それをどう発信していったりすればいいのか、実際にパソコンに向かう前までの作業がとても重要でした。
スタートが肝心とは言いますが、まさにそう。最初のベースができたから、更新やコンテンツを増やす作業も楽にできているのだと思います。
運用してからは、WEBでのプロモーションの重要性を日に日に感じているところです。
起業して実店舗はありますが、WEBが本店だと考えていましたから、狙い通り。
コーヒー豆の売り上げやコーヒーセミナーの申し込みなど、お取引のほとんどが、ホームページ経由です。
チラシや紙媒体も時と場合によっては必要だと思いますが、ホームページとは比べものにならないですね。
特に、お客さまが『マヤビニックコーヒー』を数多あるコーヒーの中の一つではなく、〝特別なコーヒー″として愛し、興味を持ってくださっているこの現状。
これはまさにWEB発信の地力だと感じます。だから、もっと知っていただきたい!もっと発信していこう!という意欲が湧くんです。
更新する際に工夫していることや、
気をつけていることはありますか。
買い付けにいった際は、メキシコ旅行期のバナーを上に持っていくなど、意識的にトップページに変化を作るようにしています。
できるだけ旬な情報をお届けしたいですし、更新していることが分かりやすければ、ホームページの閲覧回数も増えますし、新たに見つけてくださる方も増えると思うので。
あとは、そうですね、楽しく続けること(笑)
更新頻度やテクニカルな部分をMPさんにアドバイスしていただいて、できるだけ検索ワードを入れるなどしているんですが、そればかりにひっぱられると書いていて楽しくなくなっちゃう。
だから、書きたいことを書くときと、意識して情報のみを発信するときを使い分けています。続けることは大事ですから。
意識して情報発信をするのは、例えばどんなことですか。
個人のお客さまからメールでいただいたご質問の回答を、ホームページで記事として更新するときなどは、特に意識しています。
この手法を取るに至ったのは、だいたいのご質問が、皆さんも知りたいと思う情報が多かったから。
メールの返信で回答するより、『豆乃木』や『マヤビニックコーヒー』について皆さんに知っていただけるチャンスにつながるし、情報を共有できる有効な手段であると思ったので、広く公開するというスタイルにしました。だから余計にワードを意識して、欲張って書いてしまいます(笑)
サイト内の『杉山世子メキシコ滞在記』は
読んでいて楽しいですし、とても魅力的な文章で、
つい時間を忘れて〝杉山ワールド″に惹き込まれてしまいます。
ありがとうございます(笑)
あれを書くのは意外と大変で、「追い込まれてるなー」と思うこともあるんですけれど、でも、書いていて一番楽しいですね。
反響もかなりあって、「ブログ読んでいるよ」という声が本当に多い。普段はあまり意識していないのですが、そういうお声をいただくと、書く意欲がますます沸いてきます。
ブログを通して、コーヒーではない入口から『マヤビニックコーヒー』に興味を持ってくださる方や、特別なコーヒーだと感じてくださるファンの方もいらっしゃると思います。とても大切なプロモーションコンテンツの一つです。
確かに、そうだと思います。
『マヤビニックコーヒー』のストーリーや、
杉山さんの活動を知ることで、興味が深まり、ファンになる。
そうなってくれているとうれしいです。
フェアトレードという活動は、徐々に認識されてきていると思いますが、まだ足りない。その本質を理解いただくため、そして私が思い描くフェアトレードの先にある未来へつなげるためには、私にできること、発信していくことがたくさんあると思っています。
そういう意味で、『マヤビニックコーヒー』を知っていただくコンテンツはもちろん、『豆の木のこと』というコンテンツの中で、『豆の木のなる日』という起業前からこれまでの出来事や想いをつづるコーナーを設けました。読んで何かを感じたり、共感していただいたりして、『マヤビニックコーヒー』のファンになってくださったら、うれしいです。
『豆乃木』の設立には、
いろんな体験や想いがあったのですね。
青年海外協力隊での活動はもちろん、慶応義塾大学 湘南藤沢キャンパスへの進学(以下、SFC)、山本純一先生研究室での『マヤビニックコーヒー』との出会い、そしてフェアトレードプロジェクト(以下にFTP)を立ち上げていなければ、今の私はありませんでした。
FTPが支援対象としていたのは、メキシコの『マヤビニック生産者協同組合』のコーヒーの輸入と販売促進。より高品質の豆の生産と焙煎技術の向上に貢献しましたが、同時に、援助という言葉を掘り下げ「本当に現地の方が望んでいることは何か?」を考えるようになりました。
そのきっかけは、FTPが主導した『マヤビニック カフェ』をオープンするまでの体験の中にありました。
そもそもカフェテリアのオープンは、コーヒー豆の収穫時期にしか収入の機会がない生産者の方たちに、コーヒーを主体とした定期的な収入を得る機会をつくるため。そして、「おいしいコーヒーを自分たちがつくっているんだ」という価値を知り満足感を得ることで、モチベーションを上げてもらいたいという想いもありました。
彼らにとってコーヒーは収入源の一つであり、ただの飲み物。おいしいという実感はなく、私たちのように嗜好品として楽しんで飲む人たちをみたことがなかったのです。
ですからカフェのオープンは、私たちの想いが生産者に届くものと思っていました。
もちろん、カフェのオープンは良い効果があったことは確かです。生産者やカフェで働く生産者の子ども世代が、自分たちがつくるコーヒーがおいしいものであることや、『マヤ』という名前がブランド名になっていることに誇りを感じてくれているという手応えは、確かにありました。
ですが同時に、生産者たちにとって満足感や誇りより大事なのは、「手間に見合った価格で売れること」だという生産者の切実な本音を聞き、それは私の胸に深く刺さりました。
そんな体験が「援助ではなくパートナーになりたい」という想いとなり、カフェのオープンを前に、起業を決めました。
『マヤビニックコーヒー』は杉山さんにとって、
起業する価値のある、魅力あふれたコーヒーだったのですね。
青年海外協力隊で訪れたマラウィでの『一村一品運動』を思い出しました。「これは磨けば光る原石だ!」と。
マヤ先住民の人たちが大切に受け継ぎ、育てているコーヒー豆は、そのストーリーにもおいしさの秘密や価値があると思いました。
おいしさ、という部分で言うと、おいしいコーヒー豆を求めてから起業したのではないので、『マヤビニックコーヒー』が「おいしい豆で良かった」という、奇跡的な出会いだったわけですが、この奇跡は必然だったのかなと今は思っています。
ただ『マヤビニックコーヒー』は、マヤ先住民の人たちが受け継いできた農法を今も続けていることにあると私は思っているので、そういったストーリーは一つの価値として、おいしさにプラスされているかもしれませんね。それから、マヤ先住民という歴史的な背景も。
これからの『マヤビニックコーヒー』のブランド展開と
豆乃木の事業展開が楽しみです。
ブランド展開、ということに関して言えば、『マヤビニック カフェ』の2号店がオープンしたことでしょうか。(※2019年に取材した内容です)
2号店はFTP主導ではなく、1号店を運営していた現地の方たちの手によってオープンしたことに、大きな意味があります。
この展開が今後大きく花開いていくことを、私も願っていますし、楽しみにしています。
そして『豆乃木』は、10年目を迎える2020年に向けて、さまざまな思考や思想にとらわれることなく、目の前に広がる道を信じて歩いていこうと思います。
まずはホームページで、日本だけでなくアジア圏、さらには世界中の方々とも『豆乃木』の情報をシェアできるように、中国語版とか英語版とか、言語を増やしたいと思っています。
なぜなら最近、日本以外の国の方から現地に直接問い合わせがくることが増えてきたからです。
そのとき彼らは決まって「日本に『豆乃木』っていう卸業者がいるから、そこに聞いてくれ」と言うんだそうです(笑)そして私のところに連絡が来る。そういったお客さまにも分かる、伝わるホームページにしていきたいです。
あとは、もっとブログを書く時間をちゃんとつくりたい!
ブログは楽しんで書くことにしているのに、何かの合間に書いたり仕事終わりに書いたり、とにかく余裕が持てないことが今の悩み。書く時間を意図的につくることで、心に余裕ができてもっと楽しくなると思うし、生活のリズムも整うかなって。
過去に書いたものの推敲もしたいし。生活のリズムが整えば思考もクリアになって、次の目標もさらに明確なビジョンができていくと、自分も期待しています(笑)
最後に、ホームページ開設を考えている方や起業する方に、
何かアドバイスはありますか。
とにかく続けることが大事なので、何度も同じことばかりですが、楽しんで更新できるコンテンツを一つでもつくると良いと思います。
それから、日々の業務とホームページを連動させるようなコンテンツがあると、業務日誌にもなるのでとても便利。
老舗の社長さまに、長く事業を続けるために一番大切な言葉は「コツコツ」だと教えていただきました。まさにその通りだと思います。
お花を育てる気持ちで、ホームページにもコツコツお水をあげてください。やればやっただけ効果があります。そうしてマメに更新していけば、ホームページは必ず商売につながるツールになると思いますよ。