昭和32年、羽布(バフ)研磨の技術を身につけた初代が事業を興し、献身的な仕事の姿勢と技術力で、信頼と実績を積み重ねてきました。
産業の発展とともに業績を伸ばしてきましたが、2代目となる現社長に引き継がれてからの時代は、時流の変化に強く、付加価値のあるものづくりが求められるようになりました。
そこで主力事業をバリ取りとし、近年は地元企業と提携して、技術力を生かしたバリ取りロボットの開発など、新たな事業への取り組みもスタートし、徐々に成果を挙げています。
そして創業50年の節目を超えた今、次期社長として次代の戦略を計画している専務取締役(※現・代表取締役社長)の藤本武洋さんは、「バリ取り」という仕事への、意識改革と地位向上を進めています。その第一歩として、2017年秋、ホームページを開設しました。
なぜホームページの開設だったのか?ホームページ開設と同時に見えた事業戦略とは?制作段階から表れ始めた効果は?
ホームページ開設に込められた想いと、ホームページによって創られる未来の藤本工業について、うかがいました。
ホームページ開設の
いきさつを教えていただけますか?
まず、なぜホームページを持っていなかったかというと、弊社の仕事は、二次・三次下請けということが大きな理由です。守秘義務もありましたし、仕事の内容を公にすることが難しく、また、BtoBの仕事であるため、BtoCという一般の方にも発信できるホームページでの宣伝には積極的ではありませんでした。
しかし、最近になって、地元企業さんとのロボット開発などお付き合いが深くなっていく中で、今の時代、ホームページを持ってしかるべきだと助言をいただきました。そしてお話をうかがっていくうちに、ホームページを持つことで生まれるさまざまな変化や効果が実はとても大事で、宣伝効果や業績の方が後からついてくるという考え方に共感し、そこに藤本工業がホームページを持つ意義があると感じるようになりました。
私たちの業界は依然、業績や人材確保など難しい問題を多く抱え、厳しい状況に置かれています。
時代の変化に伴い、変化に対応する強さを持つ、付加価値のあるものづくりができなければ、先細りになっていくのは目に見えていました。新しい時代に向けて変化することは必須、もっと自らが発信していかなければと感じました。発信する場がほしいと、ホームページ開設に心がぐっと傾きました。そこで、MPさんを紹介していただいたのです。
ホームページの制作は、
どんな形で進められていきましたか?
どんなホームページにするのが良いのか、地元企業さんにお話をうかがったり、MPの担当者さんに相談したりしながら、方向性を決めていきました。元々、実績などを紹介して宣伝するという方向は考えていなかったので、何をどう表現していくかが焦点でした。
私が常々考えていたのは、バリ取りという仕事の地位向上。これをなくして未来は切り開けないと思うほど重要なことでした。
そこで、これを一番のポイントとして、ホームページをつくっていこうということになりました。MPさんに想いを伝えながら、私も藤本工業の仕事や業界の環境などを再度見つめ直し、事業ビジョンを再構築していきました。ホームページの方向性を決めていく中で、これはとても重要な作業でした。
ホームページをつくりながら、事業戦略が明確になっていくのが分かり、それだけでもホームページ開設を決断して良かったと思うほどでした。
バリ取りという仕事の地位向上。
これがブレることなく中軸にあったので、
私たちも制作の上で表現しやすかったです。
MPさんには、とてもすばらしい形で表現してもらえたと感謝しています。事業戦略を決め、遂行していくためには、ブレないことが大事だと思います。
ホームページ開設にあたり新たに掲げたのは、企業理念である信頼・満足・情熱は変わらず原点とした、4つの指針。藤本らしさの追求、変化に強いものづくり、人と機械の融合、バリ取りの付加価値向上。バリ取り屋の地位向上を目指すためにこれらを発信していくことで、ホームページの方向性が決まりました。
そして今回、ホームページをつくるにあたり、地位向上のほかにもう一つ、期待しているものがありました。
それは、社員たちの意識改革。ホームページをつくるにあたり、「中身は無骨に、でも見た目はカッコイイデザインで」という希望がありました。まず見た目の印象が、バリ取りという仕事のイメージアップに一役買うと考えたからです。そして、カッコイイホームページを持つ会社で仕事をしている社員は、プライドを持って仕事をするカッコイイ職人である、というイメージにつながると思いました。
地位向上には自分たちの意識改革も必要。ホームページをつくるにあたって、社員たちが襟を正すというか、自分たちの仕事に誇りと自信を持ってくれればという想いがありました。
実際、社員の皆さんには、
思った通りの効果があったようですね。
はい。制作段階から、効果てきめんでした(笑)。藤本工業の仕事に対する想いを表現するにあたり、技術力や付加価値といったものを見せるだけでなく、過酷で地味な仕事ではあるけれど、プライドを持った人の手や想いが入っていることも見せたいと思いました。
そのために、社員たちの働いている姿や円滑な人間関係が築けているチーム力のある姿を出していこうと、撮影の際には、社員たちをモデルにしました。制作段階から社員を巻き込むことで、同時に、ホームページ開設の意識と意味を感じてくれるようになったと思います。
ホームページ制作段階から、社員たちの意識や取り組む姿勢に変化を感じましたし、ホームページ開設後は、家族などからの反応も上々。これまで内に秘めていた仕事に対する想いや誇りが、表に出るようになってきたと感じます。
カッコイイ写真を撮ってくれ、カッコイイデザインに表現してくれたMPさんの力は非常に大きかったと思います。
では実際に、業績などにつながる効果というのは、
どんなものがありましたか?
ホームページ開設直後からすぐ、良い反応がありました。
この大きな理由の一つとして、藤本工業は、バリ取りの専門、スペシャリストであることを全面に出し、「バリ取り屋」という検索ワードでヒットするようにしたことがあると思います。
この検索ワードからお問い合わせいただく件数が非常に多く、皆さんがいろんなことでお困りだと思う内容ばかり。
実は、思い切ってバリ取りをメインにしたホームページにしようと決めた際、少し不安がありました。けれど、開設早々からお問い合わせがあったことで、決断は間違っていなかったと実感できました。
それと同時に、ホームページできちんと、藤本工業のバリ取りの技術力や付加価値が伝えられていると、感じることができました。
藤本工業さんの付加価値の一つに、
バリ取りロボットの開発と導入がありますね。
地元企業さんと提携し、開発しました。きっかけは、あるセミナーに参加したこと。「自分たちは技術力はあっても、それを生かしてゼロから作ったものがない」ことに気がつきました。
業界で生き残っていくために、新しいことに着手することも視野にいれていたので、これまで培った技術力を生かすものが何かないかと模索を始めました。そして地元企業さんと交流していく中で、それぞれのプロフェッショナルな部分を融合して、ロボットを作ろうという話になり、実現しました。
現在、4機目の実用化に向け、開発が最終段階です。このロボットは、バリ取り業界にとっても非常に画期的で、地位向上への大きな足がかりにもなると自負しています。
バリ取りラインの完全自動化は、現状では難しいものです。ですが、ラインの一部を自動化することは、可能になりました。一人の作業員分の仕事をする一台のロボットが、大幅に作業を効率化し、人手不足やコストの問題も軽減してくれます。さらにその分、人材育成に時間を割くこともできるようになると思います。『人と機械が融合したライン』は、藤本工業の未来を切り開く一つの大きな切り札となっていくでしょう。
けれどやはり、技術力や対応力は、まだまだ人の手が必要。お客さまからのお問い合わせの中には、細かな案件で自社では対応できない、ロボットではできないなど、イレギュラーな案件でお困りの場合が多くあります。
そこでも、藤本工業の付加価値が発揮されます。どんなご相談でも対応する柔軟さとアイディア、そして技術力も藤本工業の付加価値の一つであるからです。この技術力があってオリジナルな技を持つロボット開発にもつながっているのですから、一番の付加価値は『人』であるかもしれません。
そのほかに、効果や変化といったものはありましたか?
ホームページを開設し、藤本工業の想いを伝えたことで、いろいろなものが見えてきたり、新たなチャレンジをする機会を与えていただけたり、とてもプラスに物事が動いていることですね。それに、良いホームページをつくったことで、見る目のハードルが上がって、期待値や要望も高くなっているとも感じますけれど、真摯に対応していくことで、また自分たちの付加価値が高くなっていくと思います。
それから、ホームページのイメージを、他のものにも統一していこうという意識になったことも、ホームページが与えてくれた変化の一つでしょうか。例えば、英字のロゴを新たにつくったり、パンフレットや名刺などを刷新したり。ゆくゆくは、ユニフォームなども変えていきたいなと思っています。
そしてこれは個人的なことなのですが、想いを伝えるとこと人の大切さを改めて感じたことです。私にとってもホームページ開設は非常に勉強になり、これから社長になるにあたって気を引き締めてくれる大きな存在となりました。本当にホームページをつくってよかったです。そして、ホームページの成功の理由に、MPさんのサポートがあったことも、皆さんにはお伝えしたいです。
最後に、今後のビジョンを教えていただけますか?
ホームページをつくったことで、チャレンジしたいアイディアがいっぱい浮かんできて困っています(笑)。社内にある才能を引き出していけるような、何か面白いチャレンジをしながら優秀な人材を育てる。人とのつながりや他社とのコラボで、楽しんで仕事をしながら、次の大きなチャレンジにつなげていく。自分たちの仕事にもっとプライドを持ってもらえるようなことや、もっと楽しく取り組めるようなことを増やしていきたいですね。これからさらにロボット化が進んでいく業界ですが、やはり人の手と人の技術力は必要だと感じています。
淘汰されていく波に飲まれず、生き残るために、人でつながっていく仕事のあり方を大切にしていきたいと思います。
初めてお会いした際、事業に対する想いを語るその口ぶりとエネルギーに圧倒されたのを覚えています。
職人作業に等しく、大手企業でも内製化に後ろ向きなバリ取り作業。それとは裏腹に、業界におけるバリ取り作業の立場の低さに、サイト制作を皮切りとして現状打破していきたいという心意気は、私にしっかりとした責任感を感じさせてくれました。
制作したサイトは、そんな藤本工業様の情熱が感じられるものに仕上がりました。